思うこと

もう5年くらい「ぬ」を書いていない

◆あまり字を書かなくなった自分と大人のかたへ

あるお店の看板に「ためしてガッテン」と、荒々しく手書きされていました。中でも「め」の字が特に大きくて「ぬ」のように見えました。そこでふと気づいたのですが、ぼくはここ5年ほど「ぬ」の字を手書きしていません。5年も書かないひらがながあることに驚きましたが、すぐ、もじっこくらぶを企画している身としてはあるまじきことではないかと思い、反省を込めて検証しました。

ぼくの場合、手で字を書くのは、
・買い物メモや家族への連絡メモを書く時
・ホワイトボードに予定を書き込む時
・宅配便の送り状や役場で申請書などを書く時
・「よろしくお願いします」と一筆箋を書く時
・冠婚葬祭や展覧会で住所、氏名を記帳する時
くらいです。

文章の中でひらがなで書く助詞や副詞、接続詞に「ぬ」は使われないし、名詞や形容詞や動詞にもひらがなの「ぬ」の出現頻度は少ないと思います。お母様がたによく使われる単語としては「ぬりえ」と「ぬいぐるみ」がありますが、それ以外「ぬ」を含むよく使われる単語が思い浮かびません。「いぬ」は漢字のほうが簡単なのでひらがなは使いませんし。

さて、どうしましょう。あまり書かないと「ぬ」だけうまく書けなくなってしまいます。もっともらしく言うと、手書き習慣の機会が減るにつれ、使用頻度の少ない文字から順に世の中から美文字が減っていくことになります。日本文化の危機かもしれませんよ。無理をしてでも書かないと、綺麗な「ぬ」の文字が世の中から消えてしまいそうです。

よい解決策は浮かびませんが、そう気づいたのでとりあえずいっぱい書きました。同じ字ばかり書くとゲシュタルト崩壊しそうなので、単語にしました。ぬま、ぬけ毛、ぬれぎぬ、ぬかにくぎ、ぬるぬる、ぬえ、ぬりかべ、ぬらりひょん。月に一度くらい、「あまり使わないひらがなを書く自分会」を作ってたくさん書くことにします。

市河三英

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