◆計算が苦手なお子さまを持つ保護者の方へ◆
計算が苦手な子どものために、「計算がきらいにならない方法」を数回にわたってご紹介したいと思います。まったく計算できないわけではないのだけれど、時間がかかったり、まちがいやすかったり、なによりストレスを感じて苦手になってしまっている子どもを想定しています。この方法はつまるところ計算のストレスを小さくする方法です。フラッシュ暗算ですごい数の計算を瞬時にやることは目指していません。子どもの頃計算が苦手だったぼくが、大人になってからどこが嫌だったのかを検証してみつけた方法です。同じところでストレスを感じている子どもには効果があると思います。このブログをお読みになって、直感的に「うちの子はこのタイプかも」と感じられた方はお試しいただければと思います。
ぼくが計算する時にストレスを感じていたポイントは次の4点です。
1. 筆算でかけ算をする時、くりあがる数を小さな字でとなりの位に書いておくのが嫌だ
2. 筆算でひき算をする時、上の位から1借りてくるのが嫌だ
3. 一けたの小さな数のたし算ひき算でさえ頭の中で声を出して計算している
4. かけ算の答えを出すのにいちいち頭の中で九九の暗唱メロディーを再生している
例えば昔のぼくは 67×54を筆算する時、まず4×7を「ししちにじゅうはち」と頭の中でメロディー再生します(1回めのストレス)。28の2を小さく10の位に書き込んで(2回め)8を一の位に大きく書きます。次に4×6をメロディー再生して24を出し(3回め)、前に小さく書いた2と4を足して(4回め)十の位に6、百の位に2を大きく書きます。4回の小さなストレスを受けて一行目が268と求められます。同じように2行目を求め(5~8回目のストレス)、最後に一行目と二行目のたし算をして(9回め)計算終了です。一つのかけ算問題を解くのに9回の小さなストレスを受けます。計算が遅い原因はこの9回の瞬間的な計算遅延でした。計算が苦にならない人はこんなにたくさんの回数を計算遅延しないのではないかと思います。でもぼくはこの小さなストレスの連続がたまらなく嫌だったのです。宿題ドリルでも問題をたくさんたくさんさせられましたが一向に計算は速くならず、好きにもなりませんでした。苦役をがまんするのが勉強というものだとその時は思っていました。
さて、お気づきかもしれませんが、かけ算の筆算はなにも図1のようなやり方でなくても、図2のように上の位から計算しても良いのです。こうすると、ストレスポイントの1.が解消されます。計算のストレスを小さくする方法のひとつは、筆算のやり方を自分に合ったものにすることです。それによって上に挙げた4つのストレスポイントの1.と2.は解決できます。今はYoutubeなどWeb上にいろいろな計算の仕方が紹介されていますから、お子さまに合う方法を探してみられると良いと思います。
計算ストレスポイントの3.と4.を解決するためには、簡単なたし算と、かけ算のストレスを減らさなくてはなりません。大きな数の計算も小さな数の計算の積み重ねですから、小さな数の計算ストレスを軽減できると大きな効果が得られます。そのために、1から20くらいまでの数の和と差を頭の中で声を出して計算しなくても答えが浮かぶようにすることと、かけ算のこたえを出すのに頭の中で九九の暗唱メロディーを奏でないようにすること、を目指します。この二つができれば大きな数を計算する途中で起きている計算遅延の回数が減ります。そして楽に速く正確に計算結果を導けるようになります。
これらについては少々トレーニングが必要になります。でもご安心ください。楽しく遊びのようなことをやるうちに身に付く方法があります。トレーニングは苦しむより楽しむ方が効果が高いのです。ひなた体験学舎では算数ブロック(かずのこブロックス)を使って小さな数の和や差を体感したり、九九カード(かずのこ81)を使ってメロディーを暗唱することなく九九を覚えたりできる工夫をしています。これらの方法について、かずのこくらぶのブログで順次具体的にご紹介したいと思います。
市河三英