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生き物の名前を知る方法

 一緒に遊びたい人とは名を名乗りあい、顔や性格を知って仲良くなります。生き物も同じです。「時々見かけるキミはメジロっていう鳥なんだね。目の周りが白いからメジロか。一度聞いたら忘れない名前だよ。」と思えるようになります。草も木も、虫も鳥も、いいやつにも嫌なやつにも、生き物にはみんな名前が付いています。片っ端から名前を覚えて、身近な生き物全部と知り合いになりませんか。100~200種類くらい覚えたら近所でみかける多くの生き物と知り合いになれます。散歩してても友達に囲まれている気分になりますよ。とても楽しくなります。
生き物の名前を覚えることは、生き物を守る仕事や遺伝子の研究などさまざまな生物関係の仕事の入り口でもあります。有名な生物学の先生も実は子供の頃から生き物が好きでたまらなかった人がほとんどです。代表格には博物学のアンリ・ファーブルや植物学の牧野富太郎などがいます。

 生き物の名前を知る方法ですが、生き物を知っている人と一緒に歩いて教えてもらうのが一番早い方法です。そういう人が近くにいる場合はよいのですが、出会うことは少なくなってきました。でも今はたくさんのすぐれた学習図鑑が出版されています。この点は昔よりずっと良くなっているところです。まずは本や図鑑を見るところからはじめてはいかがでしょう。鳥が好きな人は鳥の、虫が好きな人は昆虫の、植物が好きな人は植物の図鑑を探してください。あるいは場所ごとに、たとえば田んぼ周辺のことが知りたい人には「田んぼの生き物図鑑」のようなものも出ています。本当にたくさんの種類の図鑑がありますので、自分がいちばんわかりやすい本を選んでください。学校の図書室や地域の図書館に置いてあります。

 その次にはぜひ野外で実際に生き物に触れる機会を作ってほしいと思います。野外で自分の知っている生き物に出会うことができたらドキドキします。二度目の出会いをはたすと、もうその生き物はあなたの友達です。こうしてひとつずつ知り合いの生き物を増やしていきます。

 野外観察というと自然豊かな遠い田舎にいかねばと思いがちですが、都会の真ん中の公園の片隅にも生き物はいます。ただ、観察する時はたとえ公園のような身近な場所であっても生き物の名前を教えてくれる人が必要です。そういう人がなかなか見つからないことが問題なのですが、安全確保の点と、名前を確定するという点で必要だと考えています。ぼくの経験上一人で観察するときは「これはどっちだろう」と迷うことがとても多いのです。生き物の名前を確定できないとモヤモヤが募ります。

 教えてくれる人と出会うなら、一つには同好会の主催する観察会に参加する方法があります。地域ごとに鳥なら「探鳥会」、植物なら「植物観察会」などという名前で、仲間が一緒に野山を歩いて生き物を観察する会が催されています。そのような企画を探してみてはいかがでしょう。観察会の情報はwebで調べることができます。そのほか、近くの植物園、動物園、水族館などでも行われています。観察会ではリーダーも参加者もみな生き物のことが好きな人たちですから、何も知らない初めての人にも親切に教えてくれるはずです。ポケットに入るくらいのメモ帳とペンを持って行ってくださいね。教えてもらった名前を一つずつ書いて帰りましょう。

 これはとても良い方法なのですが、残念ながらそれほど頻繁には開かれていません。生き物のことを教えてほしい時にすぐ応えてくれる身近な人がいれば、生き物好きの子供の興味を途切れさせずに生き物への深い理解を育てることができます。この役目は昔、近所にいるちょっと年上のお姉さんお兄さんや家族の大人たちが担っていました。今はこうした人たちの代わりに、近くの植物園、動物園、水族館の学芸員、理科の先生、同好会などの人がその役割を担ってくれます。これらの専門家たちも子供の頃から生き物好きだったので、子供の要望には喜んで応えてくれると思います。

 ひなた体験学舎でも生き物観察会を企画したいと考えています。身近にいる子供たちに生き物のことを聞かれたらいつでもすぐに応えてあげたいと思います。

※関連する本や映画
◆ヒュー・ロフティング「ドリトル先生」シリーズ 井伏鱒二訳 (福岡伸一訳もある。生物学者の福岡訳も読んでみたい。)
◆映画 「ビックボーイズ しあわせの鳥を探して」(原題 The big year)  デヴィット・フランケル監督 2010年  ジャック・ブラック主演

市河三英

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